今週内でのカジノ解禁法案成立はならなかったようです。審議が不十分とのことで、来週内での成立を目指しているようです。
さてもしこのカジノ解禁法案が可決された場合、国は首都圏(東京・横浜)、大阪、沖縄などへの統合型リゾート(以下IR)誘致を考えているようです。なら例えばもし沖縄へ誘致された場合、その影響はどのようなものになるのでしょうか?
1.観光客が増える
言わずもがな、沖縄の経済は観光業メインです。他にも基地関係、農業などがありますが、これらは大幅に増減することがない部類の産業です。沖縄への観光客数は平成18年を境に徐々に増加の傾向にあります。特に近年は台湾、韓国、中国を始めとする近隣アジア諸国からの観光客が増えつつあり、理由として、積極的なプロモーションや空海路線の拡充などが挙げられています。しかしもしIRが作られた場合、観光客数は現状よりさらに飛躍的に伸びると考えられています。
そもそも沖縄へ観光に来る人たちの主目的は、海です。首里城や玉陵(たまうどぅん)を始めとする世界遺産もありますが、それらを巡ることを主目的としてくる人は少数派でしょう。要するに、観光客は基本的に非日常的な空間(海)で遊び、ゆったり島の風に吹かれたい、という願望のもとに沖縄を訪れているのです。ちなみに僕の経験上、海でビキニを着て泳いでいる現地人は一人もいません。日焼けもそうですが何よりハブクラゲが怖いのです。ビキニや海水パンツ一丁で泳ぐとか怖すぎてできないのです。
他にもショッピングも可能性としてはありますが、正直なところ有名なブランドを扱っているモールは少ない(というか無い)ですし、値段もそれほど本土と変わる訳ではありません。なので高価格なハイブランドを買いにくるというメリットはありません。
IRは複合施設ですので通常、カジノ、レストラン、イベントホール、ショッピングモール、ホテル等が組み合わされて構成されています。それぞれの地域によってその比率が異なり、そこからそれぞれの得意分野が分かります。レストランとホテルの構成比率は世界中のトップIRでそれほど変わりませんが、カジノ、イベントの比率が大きく変わります。マカオではカジノの比率が大きく、ラスベガスではイベントの比率が大きいです。ラスベガスではよく世界的なボクシングマッチなどが行われますよね。それです。
結局IRができれば、観光客は増えますが 、どのような特徴を出していくのか、カジノなのかイベントなのか、はたまたそれ以外なのか。それらをよく考える必要がありそうです。次に観光客増加によって波及する影響です。
2.治安の悪化
多くの統計データでは、合法的に管理されたカジノ施設の存在とその地域治安との間に強い相関関係があることは証明されてはいません。しかし大規模IRの誘致で観光客が増えれば、今までになかったタイプの犯罪が発生する可能性もあります。それらを制御するためには、IR施設のみではなく、現地の繁華街などでの警備を強化する必要があるかもしれません。
3.自然環境の破壊
これはどのようなIRを設計するかで、大幅に変わってくる可能性があります。例えば、大規模な太陽光発電システムを取り入れたり、建設場所を自然環境の多い北部には作らないとしたり、などです。しかし結局観光客が増えるので、それに伴う自然破壊は規制によって止めるしかありません。基本的に観光客の多くは日本国内からであり、公衆衛生のマナー面ではそれほど問題がなさそうです。なのでサンゴ礁地帯への多人数での乗り入れなどを厳しく監視し、限られた自然資源を管理していくことが必要になるでしょう。
4.まとめ
大規模IRの誘致は沖縄の産業構造を大きく変える可能性がありそうですが、それに伴う問題点も山積みだと言えます。例えば、そもそもIRを設置したとしても沖縄県民にメリットはあるのか?、ビジネスを行うIR企業に多額の税金をかける必要があるのではないか?それは収益の何%か?、島内でIRで働く人材を育成していかなければならないのではないか、等々です。しかしこの問題も、どのように社会をデザインしていくのか、というとても面白い課題の一つであることは確かですね。
作者:兼子仁志
編集部